気が付くと、私は教室の机に突っ伏していた。
 顔を上げると、あたりは真っ暗、というよりかはほんのわずかにオレンジがかった暗闇に思える。ここが教室で、机が二通りに八つ並べられていて、私は一番前の右の席に座っていることは暗闇でもなぜかわかっている。そして今は小テスト中で先生はどこかへ行ってしまい、生徒だけが教室で席についていることも私は理解している。座っているのはみんな女の子。先生がいないこともあってか皆ひそひそとおしゃべりしている声が後ろから聞こえてくる。
 何か学校の決まりに対する不満や、友達や先生の陰口、うわさ。真っ暗で私は後ろを振り向くこともしないので、何を話しているのか正確には聞き取れないが、そのようなことだということは確かだ。
 私は自分が3番だということを理解している。そして隣の子に
 「私は3番だよね?」と問うと、その子の顔が暗闇の中からオレンジ色に浮かび上がって、はっきり見えた。
 「うん、そう。3番だよ。」
その子は全然知らない顔の子だったが、クラスメイトだと私は聞くまでもなく了解しているのだ。
 今は昼なのか夜なのか。しかしとても気分はいい。閉鎖された空間の中で、私たちは皆対等で、女の子で、誰かの指示を待つだけの存在。
 私は机から動こうとはしない。他の誰もが机から動くことはしないのだ。だって今は小テスト中で、もうすぐ先生が戻ってくるからね。


 気付くとまた暗闇だった。
 しかし今度は意識がはっきりとしていて、さっきのが夢だったと脳が解釈した。
 今何時かな?と思っていると、隣の方でチカチカ携帯が光っているのが目に入った。手探りで携帯を手に取り、開くと眩しさで目が少しだけ痛くなるが、目を細めて凝視しないようにしながら時計の位置を確認すると、4時はもうまわっていた。もうすぐ夜明けだ。


  私はもう女の子と呼ばれるような年ではない。後日、初夢は何かと同僚に問われた時に、このことが思い浮かばれた。他に何か見たかもしれないが、すっかり忘れていて、たぶんこれが初夢だったんだと思われる。1月3日の朝の夢。




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